カテゴリー別アーカイブ: ニュース解説

弁護団が、東芝の粉飾事件に関連するニュースを解説するコーナーです。

東芝株の日経平均銘柄入れ替えの影響について

すでに平成29年7月10日付けの報道にて、東芝は平成29年8月1日付けにて日経平均銘柄から外されるということが知られています。

その報道を受けて、東芝の株価は値下がりしています。

このことは、東芝が2部降格することが決定した段階で予測できたことではありました。

ただし、日経平均銘柄から外されることによる株価への影響は、まだ終了していないということもお伝えした方がよいと思います。

 

日経平均に採用されている会社の株は、いわゆるインデックス・ファンドによって大量に買われています。

そして、日経平均に新しく採用されると、インデックス・ファンドが「新しく買う」ために株価が上がることが多いとされています。

一方、日経平均から除外された場合には、それまで株を保有していたインデックス・ファンドが「新しく売却する」ために、株価が下がることが多いとされています。

そして、インデックス・ファンドの目的は、利益を出すことではなく、日経平均の数値と、なるべくピッタリ合う数値になるように、自分のファンドを運営することです。

そのため、インデックス・ファンドの運営者は、東芝の株のように、日経平均から除外されることが分かっているので、株価が下がる可能性が高いと思われている銘柄であっても、実際に8月1日に除外されるまでは売却することができないことが多いのです。

そして、8月1日に、東芝株の日経平均からの除外が確認できたら、インデックス・ファンドは、機械的に東芝株を売却することになります。

そういうわけで、8月1日を過ぎると、東芝株には、インデックス・ファンドが売却するという、新しい株価押し下げ要因が発生することになります。

もちろん、株価が結果的に上がるか下がるかということは、誰にもわからないことではありますが、ここで述べたことも十分に理解しておく必要はあるように思います。

東芝の東証2部降格について

東芝が、今年の8月において、東京証券取引所の1部から2部に降格することが決まったという報道がされています。

ヤフーニュースでの「東芝2部降格」報道

2部に降格するということ自体は、すでに確定していたことです。

東芝は、2017年3月期において債務超過となることを公表していますので、少なくとも東証1部に在籍することはできないことになっていました。

ですので、今回1部から2部に降格したこと自体は、とくに目新しい問題ではありません。

2部降格により何が起こるのか

2部に降格した場合には、株価が押し下げられる可能性があります。

たとえば、いわゆる「インデックス・ファンド」という、株価指標に対応した資金運用をおこなっている機関投資家が、ルールにしたがって、東証1部から外れた会社の銘柄を売るということが予測されます。

また、東芝は、いわゆる日経平均採用銘柄(日経平均を算定するときの根拠となる銘柄)のひとつですが、東証1部から降格した場合には、日経225銘柄から外れる可能性が非常に高いです。

日経平均採用銘柄でなくなった場合には「インデックス・ファンド」から自動的に株を売却される可能性が高いと思われます。

したがって、2部降格によって東芝の株価が下がる可能性はあります。

しかしながら、では、2部降格によって、東芝が、すぐに倒産するわけではありません。

東芝には、まだ利益を上げられる事業もありますので、正しいリストラをおこない、事業を再構築して、正しく業績を上げられるようになれば、再度、1部に復帰する可能性もありますし、再度日経平均採用銘柄となれる可能性も十分にあります。

東芝事件株主弁護団のスタンスは、東芝を敵視しているわけでは全くありません。東芝が正しい方法で業績を上げて復活することを期待しています。

 

東芝の「債務超過」との報道について

最近の報道では,

「東芝が3月末に債務超過となるようだ」

という観測がされています。

たしかに,債務超過となる可能性が高いのですが,ここで,

「債務超過とは倒産するということか?」

という疑問をもっている方がいましたら,

債務超過したからといって倒産するわけではない

ということを申し上げておきたいと思います。

 

債務超過というのは,あくまで,企業会計上のことです。

東芝がもっている資産(財産)

東芝の負債(借金など)

を比較すると,東芝の負債の方が多いという状態が「債務超過」ということです。

 

ですから,「債務超過」とは「現金が全くない」とか「財産がなくて,すっからかん」ということでは,全くないのです。

 

現金や預金,短期の売掛金のような,すぐに現金化して使うことのできる資産のことを

「流動資産」

といいます。

東芝は2016年11月時点で公表した2016年第2四半期決算で

流動資産を2兆9607億円持っています。

https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/library/er/er2016/q2/ter2016q2.pdf

 

約3兆円くらいの現金預金などをもっているわけです。

 

3兆円持ってて,すぐにつぶれるような会社はありません。

 

もちろん,銀行からの借金も数兆円単位なので,財務状況が良い状態では全くないのですが,すぐに倒産するような状態ではありません。

 

 

実際,債務超過であっても,東芝は3月も社員に給料を支払う予定ですし,4月にも社員に給料を支払う予定です。

 

誰も「4月の給料が出ないのではないか?」という心配はしていません。

 

また,東芝は半導体事業を売却することによって,5月ころには約2兆円程度の現金を取得できる見込みとのことです。

 

半導体事業を予定どおりに売却できれば,債務超過でもなくなりますから,倒産のおそれも当面はなくなります。

 

遠い将来はわかりませんが,少なくとも,5月や6月に倒産するようなことはないとはいえるでしょう。

東証二部降格による影響について

東芝が東京証券取引所の一部上場から二部上場に降格される可能性が高いのではないか、という報道がされています。

このため、弁護団にも、二部に降格された場合に訴訟は、どのような影響があるのか、というご質問をいただきましたので、この点について弁護団の見解をお伝えします。

 

結論から申しますと、東芝が二部降格となった場合であっても、現在おこなっている損害賠償請求には影響はありません。

したがって、二部降格となった後であっても、現在おこなっている損害賠償の裁判は今までどおり続行します。

 

二部降格によって予測される影響

さて、弁護団がおこなっている裁判には影響はないということはお伝えしましたが、東芝にとっての影響というものは当然発生します。

二部降格にしたことによって東芝には、以下の影響が出る可能性があります。

1 ファンドが東芝株を売却することにより株価が下がる可能性がある。

2 東芝にお金を貸している銀行の態度が冷たくなる可能性がある。

3 東芝の社債の格付けが下がる可能性がある。

 

いずれも東芝にとって良いか悪いかというと、悪い影響の可能性だと思われます。

ただ、東芝は半導体部門を分社化して事業を売却する方針を固めているとのことです。

半導体部門には1・5兆円から2兆円の価値があるということは広く認識されています。

したがって、半導体部門を売却することによって財務体質は改善しますので、「現在のところは」深刻な財政危機ではないと思われます。

 

むしろ、今後、中国での東芝の原発の稼働の問題や、アメリカでの原発事業について追加的な負担が発生しないかどうか、という、「これから」の問題の方がより大きな問題であるようには思います。

東芝の四半期決算発表延期について

東芝が2016年度第3四半期決算発表を延期したことが大きく報道されています。

もっとも、東芝が何も公表しなかったわけではなく、

2016年第3四半期に大幅な赤字を計上したことについては自主的に公表しています。

東芝は「正式な」2016年度第3四半期決算発表を延期した、ということです。

東芝が発表を延期したという背景には、正式な公表をおこなって債務超過であるということを正式に認めてしまうと、銀行からお金を借りている融資契約について、「財務制限条項」に触れてしまう可能性があるから、だと思われます。

「財務制限条項」の実際の内容は秘密になっていますが、通常、銀行が企業に対して巨額の資金を貸し付ける場合には、債務超過になった場合には、融資していたお金を一括返済しなさいという契約になっていることが多いのです。

「債務超過」というのは、会社の資産よりも会社の借金の方が多い状態のことです。

東芝が倒産する可能性があるか?

弁護団には最近「東芝が倒産する可能性はありますか?」という問い合わせの電話が増加しています。

弁護団としては「東芝が今すぐ倒産する可能性は低いです」と回答しています。

その理由は以下のとおりです。

1、半導体事業があるので倒産しない

東芝の半導体事業は、たしかに価値の高い事業であり、1兆5千億円から2兆円の価値があると言われています。

したがって、東芝が半導体事業を全部売却すれば、東芝には2兆円くらいの現金が入ってきます。

現在、東芝は1900億円ほど「債務超過」すなわち、会社の資産よりも借金が多い状態となっているが、2兆円の現金が入ってくれば、「債務超過」の状態はすぐに解消できます。

したがって、「東芝が今すぐ倒産する」という可能性は、ほとんどありません。

2、原子力事業があるので倒産しない

東芝の原子力事業は、日本国の国策のうえで重要な事業です。

東芝が倒産して原子力事業の技術が海外に流出するようなことは、日本国政府も望まないし、アメリカ政府も望みません。

とくに、アメリカにとっても、アメリカ国内にあるウェスティングハウスの原子力事業が危険にさらされたり、技術が外部にもれることは絶対に望みません。

したがって、少なくとも東芝が本当に倒産しそうになった場合には、日本国政府は救済します。

これは、日本国政府のためでもあり、アメリカ政府のためでもあります。

近年、シャープが倒産しそうになったときでさえ、産業再生機構は資本注入して救済しようとしました。

東芝の原子力事業は、シャープの数倍以上、日本国政府にとって重要です。

したがって、東芝は救済される可能性が高いといえます。

東芝が買収された場合は訴訟はどうなるか?

シャープのように、東芝が海外の会社に買収されるという可能性あります。

その場合には、現在おこなっている損害賠償訴訟はどうなるでしょうか?

回答としては「とくに影響を受けない」ということになります。

買収とは、東芝の株式を海外の会社が過半数またはそれ以上に買う、ということです。

東芝の株を誰が買ったとしても、東芝という会社自体はそのまま残ります。

したがって、現在、私たちがおこなっている損害賠償の裁判には、とくに影響はありません。

以上より、結論としては、少なくとも、今現在のところは、損害賠償訴訟の裁判には影響はない、と言えるでしょう。

将来はどうなるか?

さて、「今現在は東芝は倒産する可能性は低い」ということを申し上げましたが、将来どうなるか、ということについてはわかりません。

原子力事業の損害が、いままで分かっている範囲だけで済むのであればよいですが、これから先、さらに損害が出てくるという可能性はあります。

最近に注目されているのは、中国での東芝の原子力事業が不調だという話です。

中国での東芝の原子力事業については、まだ、減損などはされていません。実際に損害が出るようなであれば、あらたな減損ということになるのかもしれません。

 

「東芝 原発減損7000億円規模に拡大も」との報道について

平成28年末より「東芝のアメリカの子会社の原発の減損が1000億円から5000億円のレベルでされるらしい」という報道がされていました。

今回,いままで発表のあった上限である5000億円を,さらに超過する,7000億円の減損の可能性がある,ということが報道されています。

今のところは,東芝本体から「なぜ5000億や7000億円というレベルの減損がされるのか」という中身については,くわしい話がありませんが,今のところ,とても不思議な話だ,というほかはありません。

もともと,東芝がアメリカの子会社の原発(ウエスティングハウス社)を買収した金額は6000億円のレベルであったはずです。

そのウエスティングハウス社が「完全に価値がゼロ」になってしまったとしても,損失は買収した金額である6000億円が上限となるはずです。

なお,東芝は,平成28年の4月に,ウエスティングハウス社の価値について2600億円の減損が発生した,という会計処理をしています。

ですので,平成28年に減損した2600億円+今回減損する7000億円を足すと,9600億円となります。

つまり,買収した買値全額を超過する減損が発生する可能性がある,という事態のようです。

普通に考えると,とても不思議な話です。

※ この点については,一部の報道では,ウエスティングハウス社が関係する工事の追加費用が計上されたことが原因だということも言われているようです。ただ,東芝本体からの正しい説明がない現在では,何千億円もの追加工事だと突然言われても本当かしら?そもそも,そんな巨額の追加工事のリスクを事前に評価できなかったのか?など,いろんな疑問が出てくることも当然だと思います。

この点については,東芝が2月におこなうという,詳しい説明を待つことになるでしょう。

半導体事業の分社化

ここにきて,東芝が「半導体事業を分社化する」という計画が浮上してきているようです。

これはようするに,ウエスティングハウス社の減損が7000億円とかになってしまうと,東芝の現在の自己資本3600億円を超過してしまって,債務超過になってしまう可能性があるので,債務超過を避けるために,以下のように考えていると思われます。

① 半導体事業を分社して,分社した半導体事業会社の株式を誰かに買ってもらう

② 買ってもらった株式の代金を自己資本にする

③ たとえば,4000億円分の株式を買ってもらえれば,4000億円の現金が東芝に入るので,現在の自己資本3600億円+株式の売却代金4000億円=7600億円の自己資本となる。

④ 7600億円の自己資本になれば,7000億円を減損しても,なお600億円残るので,債務超過にはならない。

という計画だと思います。

ようするに,平成28年に,東芝メディカルを丸ごと売却して,その売却代金でもって,原発の2600億円の減損に耐えましたが,それをもう一回やる,ということです。

不毛なことをしているなあ,というのは,もはや,言うまでもありません。

ところで,東芝メディカルの場合には,「丸ごと売却」ということにしましたが,今回は「分社化」ということであって,丸ごと売却ではありません。

なぜか,ということですが,おそらく,東芝の半導体事業は,東芝メディカルとは比較にならないほどに巨大であるため,東芝の半導体事業を丸ごと買えるような会社は,すぐには見つからない,ということが大きな原因だと思います。

そこで,「丸ごと売却」ではなくて,分社化して株を売るという,「部分的な売却」をするということだと思います。

また,東芝の半導体事業は,まだ有望な事業でありますから,ここで東芝が半導体事業を丸ごと売却してしまったとすれば,東芝には,本当に全く未来がない,ということになりますので,そういう事態は避けたいという考えも,おそらく,あったのでしょう。

「トラブルメーカーの原発事業を売却すればいいではないか」

ということは,誰しも考えることですが,こんな原発事業は,誰も買おうとはしませんので,買いたいという会社がどこにもない,ということで,買手がないから売れない,ということだと思います。

そのかわり,東芝メディカルや半導体事業のように,

「有望な事業なので,いくらでも買手がつく」

という事業が売却されていくことになります。

東芝集団訴訟への影響は?

東芝集団訴訟に,なにか影響があるかどうか,ということですが,現在のところは,集団訴訟に影響はないと考えています。

もちろん,このまま東芝が倒産してしまったら,集団訴訟も続けることができなくなりますが,東芝に対しては,メインバンクが,今のところは,融資を継続すると言っていること,政府系の日本政策投資銀行も支援するような雰囲気であること,から,今すぐ倒産ということはないように思います。

東芝は原発事業をおこなっていますので,政府としては,これを放置して倒産するにまかせるということはないと思います。

トラブルメーカーの原発事業ではありますが,逆に「原発があるから潰せない」という点では,株主の役に,(少しは)たっているのかもしれません。

「証券取引等監視委員会が東芝元社長3名を事情聴取」とのニュースの解説

 証券取引等監視委員会が歴代の3人の社長から任意で事情の聴取を行ったようです。

 証券取引等監視委員会は,現在も,歴代社長を刑事裁判にかけることができるように精力的に活動しているようです。

 一方で,東京地検は,平成28年7月に「立件は困難」との見解を示しています。歴代社長を起訴し,歴代社長を刑事裁判にかけるかどうかを判断する権限は,検察官にあります。そのため,証券取引等監視委員会は,検察官が起訴できると判断できるように(判断せざるを得ないように)現在調査をしていることになります。

 

 しかし,なぜ,証券取引等監視委員会と検察との間で見解が分かれているのでしょうか。見解が分かれているものの一つが,ノートパソコン部門で行われていたBuy-Sell方式の悪用です。

 

 ここで,Buy-Sell方式について簡単にして説明しようと思います。

 A社のノートパソコンの組み立てを委託されたB1社B2社B3社が行っているとします。通常,部品の調達は,B社が行い,完成品をA社に売るという形をとります。

 しかし,各B社の購入量が少ない場合や,各B社の企業信用力に問題がある場合,調達条件が不利になります。簡単に言えば,まとめ買いをする方がお得にする,たくさん売っても,代金を支払えなさそうだから,少ししか売らない,という判断をされる可能性があるということです。

 そこで,A社が部品を調達したうえで,各B社に部品を売り,各B社が,その部品を使ってノートパソコンを製造したうえで,完成品をA社に売ります(A社が買い戻す)。これが,Buy-Sell方式の簡単な説明になります。

 東芝の場合,部品調達価格に,「マスキング価格」というのが設定されていました。これは,部品の調達価格に一定程度の金額を上乗せして,売買価格を設定しておくことにより,部品調達価格がわからないようにするメリットがあるため,採用されていました。

 

 ここまでは,証券取引法違反にはなりません。問題なのは,この後の会計処理です。Buy-Sell方式を利用した場合,決められた価格で部品を売ったとしても必ず決められた価格買い戻さなければならないため,実際には利益は発生しません。実際には,倉庫から工場に移して倉庫に戻すのと変わらないのです。

 そのため,Buy-Sell方式を利用した場合,部品を売ったことにより,利益にはならない為,「収益」と会計処理してはいけません。しかし,東芝は,これを「収益」として会計処理をしていました。

 そのため,証券取引等監視委員会は,東芝の行為を違法として歴代社長を刑事告発しようとしているのです。一方で,検察は,実際に取引がある以上,架空取引ではないため,問題ないと考えているようです。

 

では,Buy-Sell方式において,「収益」と計上して悪用するとどうなるのでしょうか。

 極端な例ですが,A社とB1からB3社をモデルに,部品の価格を1万円として「マスキング価格」を含めて,100万円,完成品の価格を5万円,商品の販売価格を10万円と仮定します。なお東芝の「マスキング価格」は,調達価格の4~8倍にもなっていました。

まず,A社は,1万円で部品を調達します,これを各B社に100万円で売ると,部品価格3万円,売買価格300万円(3社分)となり差額297万円となります。この297万円を利益として会計処理するとA社は,297万円の売り上げがあったことになります。

しかし,完成品5万円に,100万円を上乗せした315万円(3社分)で買い戻さなければならないので,実際には,297万円の利益は存在しません。利益が発生するのは,完成品10万円を売った時です。

会計上収益として処理すると297万円の売り上げがあることとなります。さらにこれを,期をまたいで行うと,当該期に買い戻す際の支払いは,存在しないため,売上のみが計算書類上に現れることになります。そのため,実際には,15万円の売り上げしかないのに,一時的に297万円の実態の無い売上を作出することができてしまいます。極端な話し「マスキング価格」を上げるだけで,売り上げを上げることができます。「3日で120億円の業績アップ」も簡単にできてしまうのです。

そして,一度,Buy-Sell方式の悪用を始めてしまうと,次の期をまたぐ際には,計算書類に買い戻しの支払いのマイナスが付くため,再度同じように「マスキング価格」を設定しなければ,業績を維持できず,(実際に業績が上がっていなければ)「マスキング価格」を上げなければ,業績アップができず,悪用が常態化してしまうのです。

これが認められてしまうと,実態の無い売上を簡単に作出できてしまうため,会社の計算書類を信用できなくなり,証券取引ができなくなってしまうため,証券取引等監視委員会は,厳しい処分を求めているのです。

 

他にも,歴代社長が不正を知っていたうえで指示していたか(故意)の立証など,検察が起訴をためらう理由があると思いますが。今回はここまでにしたいと思います。

「海外投資家ら、東芝を提訴 不正会計で166億円請求」とのニュース解説

海外の機関投資家が、東芝の2015年に発覚した不正会計により、166億円の損害が発生した、という主張で、東芝に訴訟を提起したというニュースが報道されています。

東芝のホームページにおいても、海外機関投資家から訴訟を提起されたということが公表されています。

東芝の公表記事はこちらから

今回、訴訟を提起したのは、アリアンツ・グローバル・インベスターズ、という機関投資家を中心として、ドイツとアメリカの投資家45名とのことです。

アリアンツ・グローバル・インベスターズのホームページはこちらから

この機関投資家は、ドイツに本社のある機関投資家のようであり、世界的に見ても、かなり大きい機関投資家です。世界中に拠点があり、日本でも東京に拠点を置いています。

総資産は57兆円、とのことです。

日本の年金基金より総資産が少ないですが、年金基金は公的な資金の運用ですから、同列に比較してはいけないでしょう。

民間の機関投資家で総資産57兆円というのは、世界最大級です。

さて、東芝に対する、投資家からの訴訟が今後、どうなっていくか、ということですが、

弁護士の予想としては、今後も、同規模の訴訟が何件か起こされると思います。

東芝は、日本を代表する総合家電メーカーであり、伝統もあり、国際的にも知名度の高い会社です。

ですので、多くの海外機関投資家が東芝株を買っていた可能性が高いです。

東芝自身が公表している資料によれば、東芝の株主の3分の1は海外の法人だということです。

「海外の法人」の多くは、機関投資家だと考えるべきでしょう。

東芝のような、国際的に知名度が高く、日本を代表するような会社の銘柄というものは、海外の機関投資家から見ると、ファンドに組み入れやすい銘柄なのです。

なぜならば、ファンドの所有者に対して、東芝株を買う、ということを納得させやすいからです。

海外の機関投資家は、こういう不正会計があった場合には、自分の顧客に対して、説明のつく行動をしなければなりません。

これを「スチュワードシップ・コード」といいます。

他人の財産を管理する以上は、財産管理のために最善の行動をしなさい、というルールです。

「最善の行動」といえば、不正会計による損害は賠償してもらうことが「最善の行動」ということになると思います。

少なくとも、泣き寝入りするような機関投資家は、顧客に見放されるでしょう。

そうすると、海外の機関投資家は、積極的に東芝に対して訴訟を提起してくると思います。

どのくらいの規模になるでしょうか?

東芝は、全部で42億株を発行しています。

そのうち3分の1ですから、14億株は、海外の機関投資家が保有していたことになります。

そうすると、もしも、一株あたり100円の損害が発生していたと仮定すると

(2015年5月8日から同年7月21日までの値下がり幅が、だいたい100円くらいです。)

海外の機関投資家は1400億円の損害を受けている、という可能性があります。

そうすると、現在、訴訟を起こしている、海外の機関投資家166億円、というのは、総額の10%程度、ということになります。

そうすると、まだまだ、今後、1000億円以上、海外の機関投資家から訴訟が提起される可能性がある、ということになります。

さいわい、東芝は、最近は、収益構造が改善し、株価も高くなっていますが、不正会計のツケは、まだまだ、全ては支払っていない、ということになりそうです。

 

東芝不正で「年金損害」との報道の解説

東芝の不正会計事件について,年金を運用する団体が,東芝に対して,自社が保有していた株式が不正会計によって損害を受けたとして,訴訟を提起したことがニュースとして報道されています。

年金を運用する団体は,「年金積立金管理運用独立行政法人」という名称です。

省略すると,GPIFです。

テレビ東京の報道

毎日新聞の報道

日本経済新聞の報道

この件については,弁護団でも,株主のみなさまに,何回か,お伝えしてきました。

GPIFは,平成28年6月にも,一度,6億円程度の訴訟を,東芝に対して起こしています。

このときには,新株として発行された株式を引き受けた分だけを対象としましたので,金額が少なかったのです。

そして,GPIFは,平成28年8月に,今回の約119億円の訴訟を,東芝に対して起こしました。今回,報道されているのは,この8月に起こした裁判の,第一回口頭弁論がおこなわれたという報道です。

第一回口頭弁論の場合には,裁判所に,原告と被告,そして,裁判所の三者が一回顔を合わせることになります。

ですので,ニュース報道的には「絵がとれる」ということになりますので,テレビ報道が入ることが多いのです。

なお,ニュース報道でみたところ,被告席,つまり,東芝側の代理人である弁護士は,私たちの集団訴訟に出廷している弁護士と同じ人でした。

顔に見覚えがあります。

GPIFが,私たち,個人株主と,基本的に同じ立場にたって裁判をする,というのは,私たちとしても,心強いところです。

GPIFにも,がんばってほしいと思います。

もちろん,私たちも,がんばります。

 

個人株主が新日本監査法人に対して株主代表訴訟に踏み切った理由

 東芝の個人株主が会計監査を担当した新日本監査法人に対して,平成28年9月20日,約105億円の損害賠償請求を求める株主代表訴訟を起こしています。

 どうやら,105億円のうち,73億円は,東芝が納付した課徴金,30億円は,不正発覚後の追加の監査報酬のようです。

 

 73億円の課徴金の部分については,東芝が不正会計を行ったことに対する課徴金ですから,不正会計を発見できなかった責任が新日本監査法人にあるとしても,主たる責任は,東芝にあると思われます。

 一方,追加の監査報酬については,過失により,東芝の不正会計を発見できなかったうえで,不正会計を正しくするための監査の報酬を支払っていることになります。

そのため,新日本監査法人が,不正会計をきちんと発見できていれば,追加報酬は支払う必要が無かったのですから,理屈のうえでは,請求できる可能性はあるのかもしれません。

 

 ここで,東芝の個人株主が,新日本監査法人に株主代表訴訟を提起できる根拠について,解説したいと思います。

 会社法第423条1項は,「取締役,会計参与,監査役,執行役,又は会計監査人は,その任務を怠ったときは,株式会社に対し,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。

 東芝の事件に当てはめると,「株式会社」は東芝に当たります。そして,「取締役」は既に,東芝や個人株主より,訴訟を提起されている,歴代の社長などの役員が当たります。そして,新日本監査法人は,「会計監査人」に当たります。

 そして,会社法847条に基づいて,必要な手続きを取ったうえで,株主代表訴訟を提起することができます。

 

 会計監査人に対して,個人株主が株主代表訴訟を提起することは非常に珍しい事です。

 まず,会計監査人に対して,株主代表訴訟を提起することが,法律上認められたのが,会社法ができてからのため,そもそも,歴史が浅いということがあります。

また,会計監査人は,株式会社の計算書類について,外部監査を行うことにより,株主・債権者の利益保護を図るものであると言われています。そのため,会計監査人の仕事は,会計に関する監査に限られます。

そうすると,取締役や監査役等と比べて,会計監査人の職務の範囲は狭く,また,会社外部の者ですから,「任務を怠った」という評価を受ける可能性は,一般的には,あまり大きいとは言えません。

 

さらに,会計監査人の職務は,会社の会計に関するものですから,専門性が高く,一般の株主が「任務を怠った」という判断をするのが難しいという事情もあります。

また,計算書類という秘匿性の高いものに関する職務ですから,「任務を怠った」と判断するための資料の収集自体も難しいと考えられます。

そのため,会計監査人(監査法人)に対する株主代表訴訟が提起されることは,他に類例が少ないのです。

 

 今回,東芝事件について,会計監査人である新日本監査法人に対し,株主代表訴訟が提起された,背景事情には,どういうことがあるでしょうか。

 

一番の決め手は,金融庁が行った新日本監査法人に対する「相当の注意を怠り,重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。」ことを理由とする課徴金処分だと思います。

 

金融庁が十分に調査のうえで,新日本監査法人が相当の注意を怠った,と認定しているのです。

したがって,「過失」があったと判断される可能性が出てきたと思われます。

 

そのような,金融庁の判断が背景事情にあったからこそ,今回,個人株主の方も,新日本監査法人について株主代表訴訟提起に踏み切ったのだと思います。