東芝が2016年度第3四半期決算発表を延期したことが大きく報道されています。
もっとも、東芝が何も公表しなかったわけではなく、
2016年第3四半期に大幅な赤字を計上したことについては自主的に公表しています。
東芝は「正式な」2016年度第3四半期決算発表を延期した、ということです。
東芝が発表を延期したという背景には、正式な公表をおこなって債務超過であるということを正式に認めてしまうと、銀行からお金を借りている融資契約について、「財務制限条項」に触れてしまう可能性があるから、だと思われます。
「財務制限条項」の実際の内容は秘密になっていますが、通常、銀行が企業に対して巨額の資金を貸し付ける場合には、債務超過になった場合には、融資していたお金を一括返済しなさいという契約になっていることが多いのです。
「債務超過」というのは、会社の資産よりも会社の借金の方が多い状態のことです。
東芝が倒産する可能性があるか?
弁護団には最近「東芝が倒産する可能性はありますか?」という問い合わせの電話が増加しています。
弁護団としては「東芝が今すぐ倒産する可能性は低いです」と回答しています。
その理由は以下のとおりです。
1、半導体事業があるので倒産しない
東芝の半導体事業は、たしかに価値の高い事業であり、1兆5千億円から2兆円の価値があると言われています。
したがって、東芝が半導体事業を全部売却すれば、東芝には2兆円くらいの現金が入ってきます。
現在、東芝は1900億円ほど「債務超過」すなわち、会社の資産よりも借金が多い状態となっているが、2兆円の現金が入ってくれば、「債務超過」の状態はすぐに解消できます。
したがって、「東芝が今すぐ倒産する」という可能性は、ほとんどありません。
2、原子力事業があるので倒産しない
東芝の原子力事業は、日本国の国策のうえで重要な事業です。
東芝が倒産して原子力事業の技術が海外に流出するようなことは、日本国政府も望まないし、アメリカ政府も望みません。
とくに、アメリカにとっても、アメリカ国内にあるウェスティングハウスの原子力事業が危険にさらされたり、技術が外部にもれることは絶対に望みません。
したがって、少なくとも東芝が本当に倒産しそうになった場合には、日本国政府は救済します。
これは、日本国政府のためでもあり、アメリカ政府のためでもあります。
近年、シャープが倒産しそうになったときでさえ、産業再生機構は資本注入して救済しようとしました。
東芝の原子力事業は、シャープの数倍以上、日本国政府にとって重要です。
したがって、東芝は救済される可能性が高いといえます。
東芝が買収された場合は訴訟はどうなるか?
シャープのように、東芝が海外の会社に買収されるという可能性あります。
その場合には、現在おこなっている損害賠償訴訟はどうなるでしょうか?
回答としては「とくに影響を受けない」ということになります。
買収とは、東芝の株式を海外の会社が過半数またはそれ以上に買う、ということです。
東芝の株を誰が買ったとしても、東芝という会社自体はそのまま残ります。
したがって、現在、私たちがおこなっている損害賠償の裁判には、とくに影響はありません。
以上より、結論としては、少なくとも、今現在のところは、損害賠償訴訟の裁判には影響はない、と言えるでしょう。
将来はどうなるか?
さて、「今現在は東芝は倒産する可能性は低い」ということを申し上げましたが、将来どうなるか、ということについてはわかりません。
原子力事業の損害が、いままで分かっている範囲だけで済むのであればよいですが、これから先、さらに損害が出てくるという可能性はあります。
最近に注目されているのは、中国での東芝の原子力事業が不調だという話です。
中国での東芝の原子力事業については、まだ、減損などはされていません。実際に損害が出るようなであれば、あらたな減損ということになるのかもしれません。