「東芝 原発減損7000億円規模に拡大も」との報道について

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吉田 泰郎

高松の弁護士吉田泰郎です。東芝事件株主弁護団では、事務局長 兼 広報担当をおこなっています。 吉田の詳しい自己紹介ページはこちら

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平成28年末より「東芝のアメリカの子会社の原発の減損が1000億円から5000億円のレベルでされるらしい」という報道がされていました。

今回,いままで発表のあった上限である5000億円を,さらに超過する,7000億円の減損の可能性がある,ということが報道されています。

今のところは,東芝本体から「なぜ5000億や7000億円というレベルの減損がされるのか」という中身については,くわしい話がありませんが,今のところ,とても不思議な話だ,というほかはありません。

もともと,東芝がアメリカの子会社の原発(ウエスティングハウス社)を買収した金額は6000億円のレベルであったはずです。

そのウエスティングハウス社が「完全に価値がゼロ」になってしまったとしても,損失は買収した金額である6000億円が上限となるはずです。

なお,東芝は,平成28年の4月に,ウエスティングハウス社の価値について2600億円の減損が発生した,という会計処理をしています。

ですので,平成28年に減損した2600億円+今回減損する7000億円を足すと,9600億円となります。

つまり,買収した買値全額を超過する減損が発生する可能性がある,という事態のようです。

普通に考えると,とても不思議な話です。

※ この点については,一部の報道では,ウエスティングハウス社が関係する工事の追加費用が計上されたことが原因だということも言われているようです。ただ,東芝本体からの正しい説明がない現在では,何千億円もの追加工事だと突然言われても本当かしら?そもそも,そんな巨額の追加工事のリスクを事前に評価できなかったのか?など,いろんな疑問が出てくることも当然だと思います。

この点については,東芝が2月におこなうという,詳しい説明を待つことになるでしょう。

半導体事業の分社化

ここにきて,東芝が「半導体事業を分社化する」という計画が浮上してきているようです。

これはようするに,ウエスティングハウス社の減損が7000億円とかになってしまうと,東芝の現在の自己資本3600億円を超過してしまって,債務超過になってしまう可能性があるので,債務超過を避けるために,以下のように考えていると思われます。

① 半導体事業を分社して,分社した半導体事業会社の株式を誰かに買ってもらう

② 買ってもらった株式の代金を自己資本にする

③ たとえば,4000億円分の株式を買ってもらえれば,4000億円の現金が東芝に入るので,現在の自己資本3600億円+株式の売却代金4000億円=7600億円の自己資本となる。

④ 7600億円の自己資本になれば,7000億円を減損しても,なお600億円残るので,債務超過にはならない。

という計画だと思います。

ようするに,平成28年に,東芝メディカルを丸ごと売却して,その売却代金でもって,原発の2600億円の減損に耐えましたが,それをもう一回やる,ということです。

不毛なことをしているなあ,というのは,もはや,言うまでもありません。

ところで,東芝メディカルの場合には,「丸ごと売却」ということにしましたが,今回は「分社化」ということであって,丸ごと売却ではありません。

なぜか,ということですが,おそらく,東芝の半導体事業は,東芝メディカルとは比較にならないほどに巨大であるため,東芝の半導体事業を丸ごと買えるような会社は,すぐには見つからない,ということが大きな原因だと思います。

そこで,「丸ごと売却」ではなくて,分社化して株を売るという,「部分的な売却」をするということだと思います。

また,東芝の半導体事業は,まだ有望な事業でありますから,ここで東芝が半導体事業を丸ごと売却してしまったとすれば,東芝には,本当に全く未来がない,ということになりますので,そういう事態は避けたいという考えも,おそらく,あったのでしょう。

「トラブルメーカーの原発事業を売却すればいいではないか」

ということは,誰しも考えることですが,こんな原発事業は,誰も買おうとはしませんので,買いたいという会社がどこにもない,ということで,買手がないから売れない,ということだと思います。

そのかわり,東芝メディカルや半導体事業のように,

「有望な事業なので,いくらでも買手がつく」

という事業が売却されていくことになります。

東芝集団訴訟への影響は?

東芝集団訴訟に,なにか影響があるかどうか,ということですが,現在のところは,集団訴訟に影響はないと考えています。

もちろん,このまま東芝が倒産してしまったら,集団訴訟も続けることができなくなりますが,東芝に対しては,メインバンクが,今のところは,融資を継続すると言っていること,政府系の日本政策投資銀行も支援するような雰囲気であること,から,今すぐ倒産ということはないように思います。

東芝は原発事業をおこなっていますので,政府としては,これを放置して倒産するにまかせるということはないと思います。

トラブルメーカーの原発事業ではありますが,逆に「原発があるから潰せない」という点では,株主の役に,(少しは)たっているのかもしれません。