ニュース解説「東芝に105億円賠償を」個人株主が監査法人提訴 との報道の解説

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吉田 泰郎

高松の弁護士吉田泰郎です。東芝事件株主弁護団では、事務局長 兼 広報担当をおこなっています。 吉田の詳しい自己紹介ページはこちら

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東芝の個人株主が,不正会計事件当時に東芝を監査していた,新日本監査法人に対して,東芝の不正を発見できなかったことについての損害賠償をするように求める裁判を起こしたとの報道がされています。

もともと,個人株主は今年7月に,東芝に対して,「不正会計を発見できなかった監査法人に対して損害賠償を請求しなさい」という,提訴要求を起こしていました。

会社法によれば,株主が提訴要求をおこなってから,60日以内に会社が提訴要求にしたがわない場合には,株主は,会社に代わって,提訴要求の内容にしたがった訴訟をおこすことができるようになります。

これを「株主代表訴訟」といいます。

株主代表訴訟は,「株主を代表しておこなう訴訟」ではなくて,「株主が会社を代表(代理)しておこなう訴訟」という意味です。

その意味では,「株主代理訴訟」という名前の方がよかったのかもしれません。

さて,株主から提訴要求を受けた,東芝は監査法人を提訴しない,ということを選択しました。

東芝が提訴しない,ということを決定したので,株主代表訴訟を起こすことが法律上,可能になったので,提訴した,ということです。

もっとも,監査法人は,平成27年12月に,金融庁から
「東芝の監査をおこなうにあたって,重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。」
という理由で,課徴金処分を受けています。
課徴金の金額は21億円という巨額です。

金融庁がおこなった課徴金処分の詳細はこちら

金融庁が「監査法人には過失,すなわち,ミスがあった」と判断しているのですから,監査法人に過失があるのは,あるのでしょう。

ですので,株主が「監査法人を訴えろ」と要求しているのも,当然といえば当然だともいえるところでもあります。

ただ,今回の問題は,
「東芝の当時の社長が,みずから率先して不正会計をおこなっていたにもかかわらず,監査法人に対して,東芝の不正会計を発見できなかったのだから,損害を賠償しろと言えるのか?」

という,なかなか,難しい論点に切り込む裁判ということになるのでしょう。

東芝自身も,不正会計の責任があります。

一方,新日本監査法人にも,不正会計の責任があります。

両方ともに不正会計の責任がある場合に,はたして,東芝が新日本監査法人に,不正会計による損害の賠償を請求できるのか?

おそらく,監査法人の立場からすれば
「会社が,わざと不正をして監査法人をだましたというのに,その損害を監査法人に賠償しろというのは,詐欺のようなものではないか?」
と思うでしょう。

なかなか,ユニークな裁判になると思います。

ただ,今回の裁判を通じて,東芝と新日本監査法人との関係が,明らかになってくるというところもあるのかな,と思います。

その意味では,真実発見のためには意味のある裁判だと思います。