三菱自動車の燃費偽装問題について

The following two tabs change content below.

吉田 泰郎

高松の弁護士吉田泰郎です。東芝事件株主弁護団では、事務局長 兼 広報担当をおこなっています。 吉田の詳しい自己紹介ページはこちら

三菱自動車が,自社で製造した自動車の燃費を偽装していたことが発覚し,問題となっています。

 

この不祥事によって,三菱自動車の株価は,大きく下落しました。

 

将来の自動車の売上にも,当然,影響があると思われ,三菱自動車は存続できるかどうかの瀬戸際となっています。

 

この三菱自動車の事件ですが,

「株主は会社に対して損害賠償請求ができるのかどうか?」

「東芝の事件と,どう違うのか?」

という質問を,よく受けます。

 

一般の方からみれば,東芝の事件も,三菱自動車の事件も,あまり変わらないように見えるのかもしれません。

そこで,東芝の事件と三菱自動車の事件が,どのように違うのかを考えたいと思います。

 

1 有価証券報告書の虚偽記載なのかどうか

上場企業の不祥事であっても,有価証券報告書について,虚偽があったのかどうか,という点は,非常に大きい違いです。

 

有価証券報告書という書類は,上場企業が金融庁に対して提出し,提出した内容は,即時に公開される書類です。

証券取引所の株価は,有価証券報告書に書かれている業績によって,大きく動きますので,非常に重要な書類です。

 

有価証券報告書にウソを書くと,「金融商品取引法」という法律に違反することになるので,厳しい責任を負うことになります。

「金融商品取引法」というのは,昔は「証券取引法」という名前であった法律です。

 

ですので,有価証券報告書という非常に重要な書類にウソを書いたのかどうかは,大きな違いです。

 

東芝は,過去7年間という長い間,有価証券報告書にウソを書いてきました。

 

一方,三菱自動車は,有価証券報告書にはウソを書いていません。

 

この点は,大きな違いです。

 

なので,東芝は「金融商品取引法」違反ですが,三菱自動車は「金融商品取引法」には違反していない,ということになります。

 

2 役員個人の責任追及ができるかどうか?

東芝は,金融商品取引法に違反する行為がありましたので,有価証券報告書に虚偽の記載をしたときの役員の責任が問題とされています。

 

金融商品取引法では,役員は,有価証券報告書の虚偽について,かなり厳しく責任を負います。

弁護団も,役員の個人責任も,厳しく追及しているところです。

 

一方で,三菱自動車の役員の責任はあるのでしょうか?

 

これは,あるのかもしれません。

 

燃費というのは,自動車を選ぶときに,非常に重要な要素となります。

そういう重要な要素について,役員は,きちんと管理する責任があるでしょう。

 

燃費の偽装を「知っていたのか,知らなかったのか」という点について,役員は,「知らなかった」と言っているようです。

 

しかし,偽装を知っていたのか,知らなかったのか,ではなくて,燃費について,きちんと管理,監督する責任というものが,当然,役員にはあるはずです。

 

ですから,「役員としての管理,監督責任」は,あるようにも思います。

 

ただし,三菱自動車の事件については,金融商品取引法が適用されない(可能性が高い)のです。

 

したがって,もしも,株主が,三菱自動車の役員の責任を追及するのでしたら,役員に,どのような具体的な責任があったのか,ということをひとつひとつ証明していかないといけなくなります。

 

会社内部の資料というものは,通常,会社の中にしかありません。

ですので,外部の株主が,役員の具体的な責任を追及していく,ということは,かなり難しいところではありません。

 

以上をまとめますと,

 

東芝の事件→金融商品取引法があるので,役員個人の責任追及は,わりとやりやすい。

 

三菱自動車の事件→金融商品取引法が適用されない(と思われる)ので,役員個人の責任追及は,けっこう大変

ということになります。