月別アーカイブ: 2016年8月

年金基金が東芝に損害賠償を求めたことについての考察

報道によれば,年金基金が東芝に対して,損害賠償を請求する裁判を起こした,ということについては,以前にお伝えしたとおりです。

報道によれば,年金基金は東芝に対して119億円を請求しており,さらに,本来であれば200億円請求できるのだ,ということを主張しているとのことです。

報道記事は,こちらから

今回,考えたいのは,

年金基金が東芝に対して裁判を起こしたことが,私たち弁護団にとって,有利なことなのか,不利なことなのか,ということです。

結論としては,弁護団にとっては有利な展開になったと考えています。

1,有利な展開になったと考える理由その1

年金基金 (GPIF)は,年金を運用する団体であり,その運用資産規模は,129兆円とも言われています。

世界最大規模の資産規模をもつ投資団体です。

それだけ巨額の財産を運用しているわけですから,東芝に対して損害賠償を請求するときにも,よりすぐって優秀な弁護士に裁判をまかせることができるはずです。

時給4万円とか,時給6万円の弁護士に裁判をまかせることができるのです。

私たち弁護団の弁護士も,東芝の事件については,世界で最も研究していると自負はしています。

しかし,同時に,世の中には,私たち以外にも,優秀な弁護士も,頭の良い弁護士も大勢いる,ということを知っています。

そのことを考えるならば,世界最大の年金基金が裁判をまかせるような優秀な弁護士が,私たち弁護団と同じ立場で裁判をしてくれる,ということは,大変に心強いことなのです。

もちろん,私たち弁護団の裁判と,年金基金の裁判は,別の裁判ですから,直接に助け合うことはないのですが,年金基金が判決をとったのであれば,それは「判例」という形で世間に公表されることになります。

年金基金が,東芝に対して損害賠償を請求する立場で,有利な判決をとれば,それは,私たち弁護団の事件にも,有利な影響をおよぼしてくることになります。

したがって,年金基金が東芝を訴えたことは,私たち弁護団にとって有利に影響をおよぼしてくると考えています。

2,有利な展開になったと考える理由その2

年金基金は,半分公営の団体ですから,勝ち目のない裁判をおこなうことはありません。

年金基金が裁判をおこなったということは,「この裁判は勝つ見込みが高いと判断したから裁判をおこなった」ということです。

ということは,株主が東芝に対して損害賠償を請求することは,「勝つ見込みが高いですよ」ということを,年金基金が宣言しているのと同じことです。

私たち弁護団は,当初より一貫して,株主が東芝に対して損害賠償を請求することについて,「勝つ見込みが高い」ということを,申し上げてきました。

年金基金も,私たち弁護団と同じ意見を言ってくれている,ということです。

ですので,私たちも,安心して,この裁判をおこなっていくことができます。

時間はかかっても,「勝つ見込みが高い」のですから。

年金基金が東芝に追加の損害賠償訴訟を提起しました。

東芝からのIRによれば,年金基金からの損害賠償請求訴訟が,平成28年8月9日に東京地裁に提起されたそうです。

くわしくはこちら

今回の提訴金額は約119億円だということです。

かなり大型の訴訟です。

また,東芝は,今回,私たち弁護団が起こしたものも含めて,現在,国内で起こされている訴訟を公開しています。

その中の大半は,私たち弁護団の訴訟ですが,他に1名で起こしている方もいるようです。

たとえば,大阪地裁では1名で5600万円を請求している方がいます。

広島地方裁判所福山支部では1名で5700万円を請求している方がいます。

5000万円というような,大きな被害を受けている方の場合には,1名で裁判を起こしても,裁判費用を負担してもいいのかもしれませんね。

いずれにせよ,年金基金のような,公的な機関が,私たちと同じように,株主の権利として損害賠償請求をしてくれているのは,心強いことです。

私たちも,年金基金の訴訟活動に負けないくらいに,立派な訴訟活動をおこなっていきたいと思います。

 

 

 

東芝集団訴訟第三次訴訟提起をしました。

東芝事件株主弁護団は,東京,大阪,福岡,高松の4つの裁判所に,8月8日から8月10日にかけて,訴訟提起をしました(第三次提訴)。
 
全国の合計では,原告数67名,請求総額は,5億2856万874円となります。
 
東芝集団訴訟 第三次提訴
   原告数 請求金額
東京地裁 33 ¥57,288,203
大阪地裁 23 ¥443,560,474
福岡地裁 6 ¥19,226,402
高松地裁 5  ¥8,485,795
   合計        67 ¥528,560,874
 
 
全国の被害者のみなさまと,ちからを合わせて,今回の訴訟をがんばっていきたいと思います。
 
第一次訴訟から第三次訴訟までの合計では,
原告数454名
請求総額19億円
 
という,大きな集団訴訟となりました。
 
今からでも参加できますので,ふるって,ご参加ください。

高松地裁…移送申立を却下判断。株主側勝利。

東芝集団訴訟の,中国四国第一次訴訟については,東芝の元役員である,西田氏,佐々木氏,田中氏,村岡氏が,
「裁判を東京地裁に移送してほしい」
という移送申立をおこなっていました。
これに対して,弁護団からは,移送を却下してほしいという意見を出していました。

高松地方裁判所は,平成28年8月5日付にて,本件移送申立を却下し,中国四国第一次訴訟を,高松地方裁判所で継続して審理する決定を出しました。

つまり,移送については,株主側が,勝利した,ということです。

東芝の元役員側から出された移送申立を却下する判断は,福岡地裁の判断に引き続いて,今回が二回目ということになります。

このように,東芝集団訴訟では,現在のところ,弁護団側が,有利に訴訟を展開している,と言うことができるでしょう。

 

「独フォルクスワーゲン集団訴訟は米国方式で」ロイター2016年8月9日

ロイター社から,フォルクスワーゲン社の集団訴訟に関する報道がされています。

ドイツのフォルクスワーゲン社は,排ガス規制について不正をおこなっていた,ということで,世界規模での集団訴訟の対象とされています。

フォルクスワーゲン社の本社のあるドイツでは,現在,世界中から170個の訴訟が提起されているとのことです。

170個の訴訟を別々におこなうのは,大変ですので,ドイツの裁判所は
「アメリカ方式の集団訴訟の方式で裁判を進める」
という声明を発表したとのことです。

裁判所は,今回の170個の訴訟の中から,代表となる原告を指名し,その原告と,被告であるフォルクスワーゲン社との訴訟の解決をもって,モデルケースとする,ということを考えているようです。

そうすると,裁判所としても,他の原告としても,真剣に裁判をするのは,代表となるモデルケース一件だけとなり,そのモデルケースの裁判の結果を,他の原告に関する裁判にも適用する,ということになるようです。

なお,ドイツの訴訟法は,アメリカのような「クラス・アクション方式」は認めていません。

ですから,本当にアメリカと同じような,大胆な「クラス・アクション方式」をおこなうことは不可能です。

もっとも,ドイツの現行法の範囲内において,「クラス・アクション方式」の良いところを生かすやり方はできるでしょう。

日本の裁判所も,集団訴訟の審理においては,諸外国の良い点を学んで,簡易・迅速な裁判をおこなっていただければ,と思うところです。