「東芝の不正、PC事業の社員らを任意聴取 監視委」とのニュース解説

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吉田 泰郎

高松の弁護士吉田泰郎です。東芝事件株主弁護団では、事務局長 兼 広報担当をおこなっています。 吉田の詳しい自己紹介ページはこちら

朝日新聞などで、東芝の不正会計問題で、証券取引等監視委員会が東芝の社員を任意聴取している、という報道がされました。

任意聴取とは

任意聴取というのは、逮捕や捜索差押のような強制的な手段ではなく、

「ちょっと、こっちにきて、話を聞かせてよ」

とお願いするという、「断ろうと思えば断ることができる手段」で、関係者の話を聞くという、捜査手法です。

今回、証券取引等監視委員会が任意聴取をしているというのは、間違いなく、東芝の元役員に対する刑事責任の追及を目的とした動きです。

さて、証券取引等監視委員会は、平成27年10月ころまでは、「刑事責任の追及には消極的と報道されていました。」

刑事責任に積極的になってきた理由

では、なぜ、12月ころから、証券取引等監視委員会は、「刑事責任の追及に積極的な動きに変わってきたのでしょうか。」

一言で言えば、「検察庁がやりたがっているから」だと考えます。

検察庁は、

「巨額の課徴金を課した以上、証券取引等監視委員会としては、東芝の事件は、粉飾決算事件だと判断したのでしょう。

粉飾決算事件だと判断した以上は、刑事事件にするべきだから、証券取引等監視委員会から告発してください。」

ということを、証券取引等監視委員会に、暗に言っているはずです。

もっとも、省庁間において、他の省庁に「あれをやれ、これをやれ」と言う権限は、ありませんから、表立っては要求しません。

検察庁は、もっと、巧妙なやり方をします。

証券取引等監視委員会には、多くの検察庁からの出向者がいます。省庁間の人事交流というものは盛んですから、これ自体は、何の問題もありません。

しかし、出向者というのは、いずれは検察庁に帰る予定であり、自分の帰属意識は、明らかに検察庁にあります。

こういう、「検察庁からの出向者」を通じて、検察庁の意思は、証券取引等監視委員会に伝わるのです。

12月から、「証券取引等監視委員会が、東芝の事件について、刑事告発に前向きだ」という報道が散見されるのは、こういうふうに、検察庁が、証券取引等監視委員会を、せっついているからだ、と思われるのです。

また、こういうニュースの読み方もできます。

「証券取引等監視委員会が、東芝の事件について、刑事告発に前向きだ」

という報道は、何がニュースソースになっているのか、ということです。

証券取引等監視委員会の中の、刑事告発に前向きな方ではないでしょうか。そうだとすると、それは、検察庁からの出向者ではないでしょうか?

さらに、大胆に考えれば、「証券取引等監視委員会が、東芝の事件について、刑事告発に前向きだ」という発言をした人は、「マスコミに、そういう発言をするように」と、検察庁の意向を受けてのことかもしれません。

そういうふうに、証券取引等監視委員会が刑事告発に前向きな姿勢に変わってきたというのは、検察庁の意向を受けてのことだと考えられます。

しかし、ここで、

「そんなに検察庁が刑事事件にしたいのであれば、証券取引等監視委員会からの告発を待たずに、自分で強制捜査をすればいいのではないか?」

と、思われる方もいるでしょう。

それは、そのとおりなのですが、現在の検察庁には、

「粉飾決算事件については、証券取引等監視委員会からの告発を待ってから強制捜査をする」

という不問律がある、と思われるのです。

その理由は、次回にお話します。