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毎日新聞など「東芝不正会計 課徴金70億円を勧告へ 監視委員会」との報道の解説–東芝粉飾事件とたたかう弁護団

平成27年11月18日毎日新聞などで,東芝の粉飾決算に対して,証券取引等監視委員会が課徴金70億円の納付命令を出すように金融庁に対して勧告する方向で調整に入ったとの報道がされました。

課徴金というものが,どういうものであるか,ということについては,以前に解説したことがあるので,ここでは割愛します。

ここでは,「課徴金の納付命令が出たことの影響はどうなるのか?」ということを考えたいと思います。

まず注目したいのは,課徴金の判断のなかで,11月中旬にあきらかになった東芝の子会社の原子力発電所の減損の問題(以下「原発減損の問題」といいます。)が,どのように判断されるのか,という点です。

原発減損の問題が,すでに提出した四半期報告書などの有価証券報告書の虚偽記載と判断されるのかどうか,が注目されます。

子会社における原発減損は,2012年(平成24年)に実施されていたということですから,本来なら,東芝本体の会計にも2012年(平成24年)に計上されるのが普通です。

ですから,2012年以降の東芝の有価証券報告書には,原発減損の問題が「記載されるべき重要事項が記載されていなかった」と評価される可能性が高いのです。

本来であれば,過年度(すでに過ぎ去った年度)の決算を,再度修正するのが,理に適ったやり方です。

しかしながら,東芝は,原発減損の問題について,過年度決算を修正するとは,まだ発表していません。

しかし,課徴金の判断によっては,再度,修正しなければならなくなる可能性があります。

この点が,弁護団としては,一番注目しているところです。

次に,課徴金の判断が出た場合,旧経営陣に対する東芝からの損害賠償請求に影響が出る可能性がある,ということです。

まず,本来であれば,東芝が,この課徴金の金額を,旧経営陣に対して損害賠償請求をするべきだ,ということになります。理由は以下のとおりです。

 

今まで,東芝に対して,旧経営陣に対する損害賠償を請求するように求めていた奈良の個人株主の方は,9月に「10億円」を請求するように求めていました。

この10億円という数字は,東芝が「粉飾金額を調査するためにつくった」第三者委員会の設置費用とされています。

9月の段階で,東芝が粉飾決算による損害として,確実に発生していた損害は,この10億円だったからです。

しかしながら,東芝に対して課徴金が実際に出されて,東芝がこれを納付したとすれば,この課徴金の金額は,「粉飾決算によって東芝に発生した損害」だということになります。

ですので,今回の粉飾決算について責任のある,東芝の旧経営陣は,東芝が課徴金70億円を支払ったという損害を東芝に賠償するのが当然だ,ということになります。

しかしながら,現在の東芝は,旧経営陣に対する損害賠償請求について「回収可能性を考慮して」,ごく少額しか請求していないので,おそらく,課徴金が発生しても,旧経営陣に対する損害賠償請求を増額はしないのかもしれません。

次に,株主代表訴訟を考えているという奈良の個人株主の方としては,今回の課徴金70億円をプラスして,旧経営陣に対して,

今までの10億円+課徴金70億円+役員責任追及委員会設置費用数億円

の請求をする可能性がある,と思います。

次に,課徴金の判断が出たあと,旧経営陣の刑事責任は問われるのかどうか?

という問題があります。

次に,課徴金の判断が出されたあとに捜査当局が刑事責任を問うために動き出すという可能性があります。

世間一般では,刑事責任は問われない,という意見があるようですが,私は,刑事責任が問われる可能性は十分にあると思います。

たしかに,今まで,東京地方検察庁は,全く動きませんでした。

検察には,苦い記憶がある(と思います)。

2006年(平成18年)の堀江氏のライブドア事件の際に,検察は,突然,堀江氏を逮捕して強制捜査をおこないました。

このとき,証券市場は大きく反応して,日経平均株価も大きく下がりました。

これは,検察の想定外であり,この件について検察は,かなり反省したはずです。

なぜなら,ライブドア事件のあとには,検察は,一度も,粉飾決算の事案について課徴金の判断がまだ出ていない状況での強制捜査をしていないからです。

検察は,どういう反省をしたのか,ということですが,別に,

「堀江氏に迷惑をかけて悪かった」

とは,絶対に考えてはいません。

検察が犯罪者に同情していては,仕事になりませんから,堀江氏自身には,同情はしていません。

ただ,検察は,

「証券市場を無用に混乱させて,多くの投資家に,結果的に損害をあたえてしまったこと」

については,かなり反省しているはずです。国家機関は,証券市場に対して中立的であるべきであって,必要以上に影響を与えてはいけない,ということは,わきまえているはずです。(少なくとも,私の知る検察官のキャラクターから考えれば,そういう思考になるはずです。)

そういうわけで,検察は,今では

「証券市場のことは証券市場に任せます。検察は,証券市場を監視する証券取引等監視委員会が判断したあとに動きます」

というポリシーであるはずです。

ですので,課徴金の判断が出た,ということは,検察にとっては,

青信号

が出た,ということなのです。