ロイター通信など「東芝、WHの減損非開示で東証基準に違反」との報道の解説

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吉田 泰郎

高松の弁護士吉田泰郎です。東芝事件株主弁護団では、事務局長 兼 広報担当をおこなっています。 吉田の詳しい自己紹介ページはこちら

平成27年11月17日,毎日新聞などにおいて,東芝の子会社の原子力大手のウエスティングハウスが2012年度(平成24年)に9億3000万ドル(約762億円)の損失計上をおこなったことを当時公表していなかったことが,東京証券取引所での適時開示違反であったということを公表しました。

 

このニュースを解説したいと思います。

まず,世間一般では,親会社,子会社,と一般にいいますが,それぞれが別の会社です。

親会社の資産と,子会社の資産は,それぞれ,別です。

ですから,「子会社が損失を出した」といっても,それがすぐに,親会社の損失となるとはかぎりません。

ただし,親会社というのは,子会社の株式を大量に持っているわけです。

ですから,親会社の「資産」の一部が子会社の株式であるわけですから,子会社の株式が値下がりした場合には,それだけ,親会社の「資産」が値下がりするということになります。

したがって,親会社は,親会社の「資産」である子会社の株式が値下がりしたら,親会社の「資産」が減少した,という会計処理をしないといけないのです。

 

ただ,「子会社の株式が値下がりした」と言えるのかどうか,というのは,また,いろいろと解釈の余地のあるところでもあります。

 

証券取引所に上場している株式の場合には,毎日,その株式の値段がつきますから,値下がりした,値上がりした,ということが正確に言えるわけです。

 

しかしながら,証券取引所に上場している株式,いわゆる非上場株式の場合,子会社の株式の市場取引をしている人がいませんから,客観的に正しい値段をつけてくれる人がいません。

 

したがって,非上場の子会社の株式の資産価値が,下がったのか,それとも下がっていないのか,というのは,一見して,よくわからないところがあるのです。

 

本来,非上場の子会社であっても,その資産価値を適正に評価するために,公認会計士という資格をもった人が監査をするわけです。

公認会計士は,自分が出した「適正意見」が間違っていた場合には,責任を問われる立場にありますから,法律に基づいて正しい会計をおこなおうとします。

しかしながら,時には,業績をよく見せかけたい企業の幹部と,意見が衝突してしまうということもあるわけです。

 

公認会計士の監査報酬を支払っているのは,企業の方ですから,企業は,公認会計士が気に入らなければ,

「お宅が言うことを聞かないなら,他の会計士に変えるわ!」

という,最終手段がつかえるわけです。

 

こうなってくると,公認会計士も困ります。

ですので,「完全な違法会計はさすがにできないが,なんとか屁理屈をこねて,一応の理屈の合う範囲で企業の要求をギリギリ認めよう」という,(不毛な)努力を,公認会計士は,おこなうことになるのです。

 

そして,実際,東芝と,公認会計士との間で,ウエスティングハウスの資産価値について,激論があったようですが,東芝本社が,かなり強く言って,公認会計士を押さえ込んだようです。

 

 

そして,ウェスティングハウスの件については,2012年度(平成24年)の段階で,本来ならば,東芝本体における資産価値に計上するべきであったにもかかわらず,計上していなかった,ということになるわけです。

 

さて,この問題は,どのように発展するのか,それはまた,別稿にて触れていきたいと思います。