月別アーカイブ: 2015年11月

NHKなど「旧ライブドア経営陣に賠償命令」ニュース解説

平成27年11月25日に、NHKニュースなどで、下記のニュースが報道されました。

「旧ライブドアの粉飾決算事件で、株価が下落し損害を受けたとして、株主だった男性が堀江貴文元社長ら当時の経営陣に賠償を求めた裁判で、東京地方裁判所はおよそ9200万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。」

これは、2006年(平成18年)に発覚した、ライブドアの粉飾決算により株価が下落したことによる、株主の損害が認められたという事件です。

ライブドア粉飾事件の場合には、史上最大の3300人の原告の集団訴訟がおこなわれました。
この裁判は、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所、と進み、2012年(平成24年)に、最高裁判所で、決着しています。
このときには、下落した株価の、ほぼ全額を賠償せよ、ということになりました。

ですので、賠償請求が認められたこと自体は、さほど不思議ではないのです。

粉飾決算があった場合には、株主からの賠償請求が認められるのは常識になりつつある、ということでしょう。

今回、集団訴訟とは別に、株主が訴訟を起こしていたようですが、なんで、集団訴訟から3年遅れて、しかも、なぜ、まだ東京地裁の段階なのか?は疑問です。

他の集団訴訟は、すでに、最高裁判所で、3年前に判決まで出ているわけですから。

なにか、特別な事情でもあったのでしょうか?

ニュース報道をみるかぎりは、特別な事情がわからないので、その点が疑問としては残ります。

平成27年11月14日_東京での被害者説明会_東芝粉飾事件

11月14日、東京の上野駅近くのオフィスビルにて、被害者説明会をおこないました。

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ちょうど、前日の11月13日に、東芝が今まで「業績は順調だ」としてきた、東芝の子会社である、ウエスティングハウスが、2012年度、2013年度に、1600億円程度の損失を出しており、東芝が、その子会社の損失を、発生した当時に公表していなかったことが、日経ビジネス誌にすっぱ抜かれました。 続きを読む 平成27年11月14日_東京での被害者説明会_東芝粉飾事件

毎日新聞など「東芝不正会計 課徴金70億円を勧告へ 監視委員会」との報道の解説–東芝粉飾事件とたたかう弁護団

平成27年11月18日毎日新聞などで,東芝の粉飾決算に対して,証券取引等監視委員会が課徴金70億円の納付命令を出すように金融庁に対して勧告する方向で調整に入ったとの報道がされました。

課徴金というものが,どういうものであるか,ということについては,以前に解説したことがあるので,ここでは割愛します。

ここでは,「課徴金の納付命令が出たことの影響はどうなるのか?」ということを考えたいと思います。

まず注目したいのは,課徴金の判断のなかで,11月中旬にあきらかになった東芝の子会社の原子力発電所の減損の問題(以下「原発減損の問題」といいます。)が,どのように判断されるのか,という点です。

原発減損の問題が,すでに提出した四半期報告書などの有価証券報告書の虚偽記載と判断されるのかどうか,が注目されます。

子会社における原発減損は,2012年(平成24年)に実施されていたということですから,本来なら,東芝本体の会計にも2012年(平成24年)に計上されるのが普通です。

ですから,2012年以降の東芝の有価証券報告書には,原発減損の問題が「記載されるべき重要事項が記載されていなかった」と評価される可能性が高いのです。

本来であれば,過年度(すでに過ぎ去った年度)の決算を,再度修正するのが,理に適ったやり方です。

しかしながら,東芝は,原発減損の問題について,過年度決算を修正するとは,まだ発表していません。

しかし,課徴金の判断によっては,再度,修正しなければならなくなる可能性があります。

この点が,弁護団としては,一番注目しているところです。

次に,課徴金の判断が出た場合,旧経営陣に対する東芝からの損害賠償請求に影響が出る可能性がある,ということです。

まず,本来であれば,東芝が,この課徴金の金額を,旧経営陣に対して損害賠償請求をするべきだ,ということになります。理由は以下のとおりです。

 

今まで,東芝に対して,旧経営陣に対する損害賠償を請求するように求めていた奈良の個人株主の方は,9月に「10億円」を請求するように求めていました。

この10億円という数字は,東芝が「粉飾金額を調査するためにつくった」第三者委員会の設置費用とされています。

9月の段階で,東芝が粉飾決算による損害として,確実に発生していた損害は,この10億円だったからです。

しかしながら,東芝に対して課徴金が実際に出されて,東芝がこれを納付したとすれば,この課徴金の金額は,「粉飾決算によって東芝に発生した損害」だということになります。

ですので,今回の粉飾決算について責任のある,東芝の旧経営陣は,東芝が課徴金70億円を支払ったという損害を東芝に賠償するのが当然だ,ということになります。

しかしながら,現在の東芝は,旧経営陣に対する損害賠償請求について「回収可能性を考慮して」,ごく少額しか請求していないので,おそらく,課徴金が発生しても,旧経営陣に対する損害賠償請求を増額はしないのかもしれません。

次に,株主代表訴訟を考えているという奈良の個人株主の方としては,今回の課徴金70億円をプラスして,旧経営陣に対して,

今までの10億円+課徴金70億円+役員責任追及委員会設置費用数億円

の請求をする可能性がある,と思います。

次に,課徴金の判断が出たあと,旧経営陣の刑事責任は問われるのかどうか?

という問題があります。

次に,課徴金の判断が出されたあとに捜査当局が刑事責任を問うために動き出すという可能性があります。

世間一般では,刑事責任は問われない,という意見があるようですが,私は,刑事責任が問われる可能性は十分にあると思います。

たしかに,今まで,東京地方検察庁は,全く動きませんでした。

検察には,苦い記憶がある(と思います)。

2006年(平成18年)の堀江氏のライブドア事件の際に,検察は,突然,堀江氏を逮捕して強制捜査をおこないました。

このとき,証券市場は大きく反応して,日経平均株価も大きく下がりました。

これは,検察の想定外であり,この件について検察は,かなり反省したはずです。

なぜなら,ライブドア事件のあとには,検察は,一度も,粉飾決算の事案について課徴金の判断がまだ出ていない状況での強制捜査をしていないからです。

検察は,どういう反省をしたのか,ということですが,別に,

「堀江氏に迷惑をかけて悪かった」

とは,絶対に考えてはいません。

検察が犯罪者に同情していては,仕事になりませんから,堀江氏自身には,同情はしていません。

ただ,検察は,

「証券市場を無用に混乱させて,多くの投資家に,結果的に損害をあたえてしまったこと」

については,かなり反省しているはずです。国家機関は,証券市場に対して中立的であるべきであって,必要以上に影響を与えてはいけない,ということは,わきまえているはずです。(少なくとも,私の知る検察官のキャラクターから考えれば,そういう思考になるはずです。)

そういうわけで,検察は,今では

「証券市場のことは証券市場に任せます。検察は,証券市場を監視する証券取引等監視委員会が判断したあとに動きます」

というポリシーであるはずです。

ですので,課徴金の判断が出た,ということは,検察にとっては,

青信号

が出た,ということなのです。

 

 

 

ロイター通信など「東芝、WHの減損非開示で東証基準に違反」との報道の解説

平成27年11月17日,毎日新聞などにおいて,東芝の子会社の原子力大手のウエスティングハウスが2012年度(平成24年)に9億3000万ドル(約762億円)の損失計上をおこなったことを当時公表していなかったことが,東京証券取引所での適時開示違反であったということを公表しました。

 

このニュースを解説したいと思います。

まず,世間一般では,親会社,子会社,と一般にいいますが,それぞれが別の会社です。

親会社の資産と,子会社の資産は,それぞれ,別です。

ですから,「子会社が損失を出した」といっても,それがすぐに,親会社の損失となるとはかぎりません。

ただし,親会社というのは,子会社の株式を大量に持っているわけです。

ですから,親会社の「資産」の一部が子会社の株式であるわけですから,子会社の株式が値下がりした場合には,それだけ,親会社の「資産」が値下がりするということになります。

したがって,親会社は,親会社の「資産」である子会社の株式が値下がりしたら,親会社の「資産」が減少した,という会計処理をしないといけないのです。

 

ただ,「子会社の株式が値下がりした」と言えるのかどうか,というのは,また,いろいろと解釈の余地のあるところでもあります。

 

証券取引所に上場している株式の場合には,毎日,その株式の値段がつきますから,値下がりした,値上がりした,ということが正確に言えるわけです。

 

しかしながら,証券取引所に上場している株式,いわゆる非上場株式の場合,子会社の株式の市場取引をしている人がいませんから,客観的に正しい値段をつけてくれる人がいません。

 

したがって,非上場の子会社の株式の資産価値が,下がったのか,それとも下がっていないのか,というのは,一見して,よくわからないところがあるのです。

 

本来,非上場の子会社であっても,その資産価値を適正に評価するために,公認会計士という資格をもった人が監査をするわけです。

公認会計士は,自分が出した「適正意見」が間違っていた場合には,責任を問われる立場にありますから,法律に基づいて正しい会計をおこなおうとします。

しかしながら,時には,業績をよく見せかけたい企業の幹部と,意見が衝突してしまうということもあるわけです。

 

公認会計士の監査報酬を支払っているのは,企業の方ですから,企業は,公認会計士が気に入らなければ,

「お宅が言うことを聞かないなら,他の会計士に変えるわ!」

という,最終手段がつかえるわけです。

 

こうなってくると,公認会計士も困ります。

ですので,「完全な違法会計はさすがにできないが,なんとか屁理屈をこねて,一応の理屈の合う範囲で企業の要求をギリギリ認めよう」という,(不毛な)努力を,公認会計士は,おこなうことになるのです。

 

そして,実際,東芝と,公認会計士との間で,ウエスティングハウスの資産価値について,激論があったようですが,東芝本社が,かなり強く言って,公認会計士を押さえ込んだようです。

 

 

そして,ウェスティングハウスの件については,2012年度(平成24年)の段階で,本来ならば,東芝本体における資産価値に計上するべきであったにもかかわらず,計上していなかった,ということになるわけです。

 

さて,この問題は,どのように発展するのか,それはまた,別稿にて触れていきたいと思います。

パート2「東芝、歴代3社長ら5人提訴=計3億円の賠償請求―不正会計」との報道の解説

前回、東芝が元幹部に請求する金額は、3億円などでは全然ダメであって、最低限10億円は請求するべきだ、という意見を言いました。

それは、もう、そういうふうに結論をつけたのですが、次に考えたいのは、

「なぜ、東芝は3億円に限定したのか?」

ということです。

以下は、私の推測にすぎない、ということを前提に聞いてください。証拠があるわけではないのです。

まず、東芝の歴代3社長は、7月に発表のあった第三者委員会の結果を踏まえて、役員などを辞職しました。

たしか、そのとき、役員を辞職するときに、一人あたり1億円くらいの退職金が支払われた、という報道があったように思います。

東芝に勤続何十年、役員手当なども付くなら、退職金1億円くらいは、十分にあり得る話です。

もし、元社長の方々が退職金の支払を辞退したのであれば、そういう報道があるはずですが、そういう報道はありませんでした。

もし、元社長3人が、退職金1億円を支給してもらい、それを現在も持っているのであれば、その金額は、1億円×3人で、3億円になります。

そうすると、「3億円」という金額には、特別な意味合いが出てきます。

つまり、東芝は「粉飾決算の中心人物であった以上、さすがに退職金は返してくださいよ、でも、退職金を返していただければ、それ以上の責任は追求しませんよ」

という意思表示をした、と解釈できるのです。

ひょっとしたら、大企業の経営幹部の感情というものは、そういうものなんでしょうか?

ただ、たとえ経営幹部が、そう思ったとしても、第三者委員会が、そういう「経営者の事情」とは別個独立の立場で、責任追及を判断しなければならないはずです。

第三者委員会のトップは、元・札幌高裁長官ということで、少しは期待するものがあったのですが、

こんなふうに「裁判官を辞めたとたん、スポンサーにおもねる」ような判断をするとは、

裁判官出身者といえども、まったく、あてにはならない、ということですね。

「世渡り上手な」元裁判官だと思います。

また、もう一つ、気になるのは、役員責任賠償保険は適用されないのか?ということです。

上場会社の役員は、通常、役員責任賠償保険、という保険に入っていることが多いのです。

たとえば、東京海上日動保険の役員責任賠償保険は、こういうものです。

もっとも、無制限ではなく、上限5億円とか、10億円とかいう上限金額の設定はあることが多くはありますが。

しかし、少なくとも、一人あたり1億円しか保険の上限がないということはあり得ないでしょう。

交通事故に備えた、車両保険ですら、1億円くらいはカバーしているのが当たり前です。

まして、役員賠償責任保険で1億円だけしかない、ということは、考えられません。

そう考えると、合計で3億円という金額は、元社長3人が、ひとりずつ、役員賠償責任を1億円だけ使ってしまえば、楽に払えてしまう金額です。

もし、役員賠償責任保険から支払えるとすれば、元社長3人は、

退職金を一人1億円もらったうえで、

東芝からの責任追及に対しては、保険対応してもらって、自腹は傷まない、ということになるのでしょうか?

はあ……アメリカには、そういうふうに、会社を倒産させても、私財はがっちり確保して、

悠々自適に余生を過ごすという、ワルがいると聞いたことがありますが、

日本の経営者も、ワルいところだけ、アメリカ化したものですね。

もっとも、退職金が1億円、とかいうあたりが、いかにも庶民的で、みみっちくて、イヤですが。

さて、そこまで考察したうえで、考えるべきなのは、

「なぜ、東芝は、そういうふうに、元役員の責任追及を甘くするのか?」

という疑問です。

よく、会社法の本などでは、会社の元経営幹部に対する責任追及は、「現在の経営陣との人的関係があることにより、十分な責任追及がなされないことが多い」

と説明されることがあります。ようするに、

「元経営幹部といっても、昔からよく知ってるセンパイだし、上司だったので、心情的に、責任追及しにくい」

ということです。

ただ……いくらなんでも、今回のように、意図的に粉飾決算をおこない、しかも、その金額が2000億円以上、というケースで、

「仲が良かったし、昔のセンパイをだから遠慮している」

ということが理由だとしたら、あまりにも、アホっぽいです。

さすがに、東芝の社長にまで昇りつめた、現社長は、そこまでアホだとは思えません。

現社長は、「悪いのは全て、前社長と、歴代の社長であって、私には関係がありません」

といって、前社長たちに責任をなすりつけた方が得な面もあるとあると思うのです。

逆に、今回みたいな、甘い処分だと、「元経営陣に対する責任追及が甘すぎる」

として、逆に、株主から、自分の個人責任を追求される可能性があります。

では、現社長は、なぜに、元幹部を厳しく責任追及しないのでしょうか?

おそらく「過去の粉飾決算について、元幹部に厳しく責任追及をした場合、自分自身も、責任追及をされる可能性がある」

と思っているからではないでしょうか。

もともと、現社長は、東芝の粉飾決算がおこなわれていた時期に役員をつとめていたわけですから、たしかに、厳しく責任追及をされた場合には、責任を問われるべき立場にもあります。

実際、奈良の個人株主の株主代表訴訟の提訴予告通知には、現社長の名前もあったのです。

そうだとすると、現社長は、「自分が責任追及をされたくないために、元幹部に対する責任追及も甘くした」のではないか、と思うのです。

さて、そういうふうに「責任を逃れるために権力を握っておきたい」と考えている人間は、少し、やっかいです。

権力を手放したら、その瞬間に追われる立場になる、という恐怖があります。

そうすると、「自分の身の危険を感じるがゆえに、権力を手放さない」という、

まるで、日本の周辺にあるような、独裁国家と同じ現象になるのではないでしょうか?

現社長の体制は、当初は「場つなぎ」みたいに言われていましたが、

ひょっとすると、長期政権になるのかもしれません。

 

 

「東芝、歴代3社長ら5人提訴=計3億円の賠償請求―不正会計」との報道の解説

日経新聞などで、東芝が、粉飾決算の元凶であった、前社長の田中氏のほか、佐々木則夫氏、西田厚聡氏の元社長2人と、村岡富美雄氏、久保誠氏の元財務担当役員2人に対して、損害賠償請求の裁判を起こした、という報道がありました。

この裁判は、会社としての東芝が、東芝の元社長などの幹部であった者の個人の責任追求を行う、というものです。

それだけ聞くと、まるで、東芝が自主的に、元幹部の責任追及をおこなっているように思われるかもしれません。 続きを読む 「東芝、歴代3社長ら5人提訴=計3億円の賠償請求―不正会計」との報道の解説

平成27年11月5日_神戸での東芝粉飾事件_被害者説明会

神戸での、2回目の被害者説明会をおこないました。

今回は、来週に大阪説明会があるためか、本当に、神戸の地元の方だけがお越しになりました。

こういう少人数の説明会の方が、弁護士としては、リラックスして話ができますもので、気楽にできていいですね。

説明会というよりも、質疑応答の時間が多かったように思います(笑)