日別アーカイブ: 2015年9月9日

東芝事件株主弁護団の発足にあたって(4)

粉飾決算の事件として、世間の注目を浴びた事件としては、ライブドア事件を外すことはできないと思います。

堀江貴文氏は、IT企業の若き指導者として、過激な言動で世間に物議をかもしていました。
「稼ぐが勝ち」というタイトルの書籍を出版し、「金を稼げば女にモテる」というような、かなり即物的な言動をされていました。

2004年、2005年当時は、ちょうど、時の小泉首相の「改革」路線であったこともあり、日本全体が、新しいことをやろうとする人に対して、寛容であったと思います。

ただ、思えば、小泉首相のもとでの「改革」のうち、あとで検証すると、「やらなければよかった」と評価されるものも多々あります。

法科大学院の設置をはじめとする「司法改革」も、そのひとつです。法科大学院は、設立当初から、「司法試験合格者3000人」「司法試験合格率7割」というような目標というか、スローガンが先行しており、「法科大学院は大丈夫か?」「法科大学院は、やばくないか?」と指摘する声が多かったと記憶しています。

ところが、冷静な反対の声を無視して「改革に反対するものは抵抗勢力だ」とでも言わんばかりに、あれよあれよ、と法科大学院が、雨後のタケノコのように、日本全国に、ニョキニョキと生えてきました。

特定の大学を取り上げることもないかとは思いますが、姫路獨協大学などは、今までの大学卒業生のうち司法試験合格者がゼロであったにもかかわらず、法科大学院の設置が許された、ということでい、まさに、「法科大学院バブル」の時代でした。

法科大学院は、まったく、我が国の司法界の暗黒の歴史のひとつですが、少し脱線が過ぎました。そういうふうに、新しいことにチャレンジするような人を社会が許容する雰囲気だったのが、2004年、2005年ころの、日本社会でした。

その時代の流れの中で、ライブドアの堀江氏は、あっという間に頭角をあらわし、時代の寵児となっていったのです。

堀江氏は、もともと、ライブドアの高い株価を利用して、他の企業を買収していました。ライブドア自体の事業は、それほど利益が出ていたわけではないのですが、ライブドアの株価が高ければ、現金ではなく、株で他の価値ある企業を買収することができます。そして、買収した企業が、きちんと利益を出せば、それにより、ライブドアも利益を出せるようになる、という構造です。ライブドアの株価さえ高くたもたれていれば、合理的な企業戦略であったとも言えるでしょう。

たしかに、堀江氏は、買収する企業の選択については天賦の才能があったと思います。堀江氏が買収していた企業は、消費者金融業、証券会社、弥生会計、など、きちんと現金を生み出していた企業でした。
とくに、ライブドアグループの利益の90%は消費者金融事業が生み出していたのです。堀江氏は「稼ぐが勝ち」という書籍も出していたくらいですので、きちんと現金を生み出す事業の大事さをちゃんと知っていたのです。

なお、このころに堀江氏が買収した企業の多くは、のちにライブドアが粉飾決算で大きな波乱に巻き込まれたあとも、それとは関係なく利益を上げ続けていたため、ライブドアは企業としては生きながらえることになります。堀江氏の企業を見る目の正しさは、のちに皮肉な形で証明されたということです。

堀江氏のそういう点は、理念が先行して稼ぎがついてこずに経営破綻していた多くのIT企業とは、一線を画するものであったと思います。

なお、「IT企業が高い株価を利用して、現金ではとうてい買収できないような大きな会社を買収する」という手法は、堀江氏の独創ではなく、その数年前のアメリカに模範がありました。

AOLは、アメリカのインターネット・プロバイダー事業などをおこなう会社でした。2000年ころというのは、アメリカでインターネット・バブルが盛り上がった時期でした。

インターネット・プロバイダー事業というのは、実際にはそれほど高い利益の出る商売ではないのですが、このころのアメリカ証券業界では、インターネットに関係していれば、なんでも高い株価がついたのです。

AOLは、自社の株価がもっとも高い時をねらって、タイム・ワーナーを買収しました。タイム・ワーナーは、有名な新聞紙のタイム、映画・エンターテイメントのワーナーが合併した会社です。

日本でいえば、日本経済新聞と東映を合わせたような会社でしょうか。

もしも、日本で、@ニフティが、日本経済新聞と東映を買収していたとしたら、当時の日本人は、
「インターネットは、そんなにすごいのか」
と、驚いたことでしょう。
それと同じくらい、AOLによるタイム・ワーナーの買収は、インパクトがありました。