月別アーカイブ: 2015年9月

日本経済新聞「東芝、責任調査委員会を設置 不適切会計期間の役員を調査へ 」との報道について

平成27年9月17日
日経新聞
東芝が責任調査委員会を設置した,という報道がされました。
この責任調査委員会の目的は,東芝が粉飾決算をしていた期間である,2008年度から2014年度4月~12月の間に役員であった者に,粉飾決算の責任があるのかないのか,ということを調査することだとされています。
調査の対象とされている役員には,すでに東芝を退職している役員のほか,現在の社長である室町社長も含まれている,とのことです。
これは,先般,奈良の個人株主の方が,東芝に対して,株主代表訴訟の提訴通知をだしたことと関係しています。
提訴通知を東芝が受け取ってから,60日以内に,役員に対する賠償請求を東芝がおこさない場合には,株主が東芝に代わって裁判を起こすことができるわけです。
東芝にとってみれば,60日以内に何もしなければ,
「やはり東芝は,粉飾決算をした当時の役員をかばっている」
というふうに評価されますので,何もしないわけにはいかない,ということになります。
ただし,社内で検討をするだけでは
「当時の役員と癒着して,正しい判断ができない」
というふうにみられる可能性がありますので,責任調査委員会のトップである「委員長」を第三者にした,ということです。

報道記事では,委員長は「弁護士で元札幌高裁長官」の方がついた,ということになっています。
このあたり,え?この人は,弁護士なの?裁判官やめたの?
という疑問が出てくるかもしれません。 続きを読む 日本経済新聞「東芝、責任調査委員会を設置 不適切会計期間の役員を調査へ 」との報道について

ロイター「東芝を特設注意市場銘柄に指定」との報道について

平成27年9月14日のロイター通信によると,東京証券取引所は東芝を「特設注意市場銘柄」に指定した,との報道がされています。

「特設注意市場銘柄」というのは,証券取引所が,企業の内部管理体制を改善する必要性が高いと判断した場合に指定する銘柄です。

上場廃止とは違います。もちろん,「特設注意市場銘柄」に指定されたあとも,普通に,売ったり買ったりできます。

「特設注意市場銘柄」に指定されてから,1年ごとに,内部管理体制を東京証券取引所に提出しないといけません。

もしも,東京証券取引所が「内部管理体制が改善されていない」と判断したら,上場廃止もあり得るわけですが,まず,そのような事態にはならないと考えています。

なお,平成27年9月15日段階で,特設注意銘柄に指定されているのは,東芝の他

エナリス(6079)

リソー教育(4714)

などです。

いずれも,過去に,粉飾決算をおこなって,現在,株主から裁判をおこされている企業ばかりであり,ここに,日本を代表する大企業である東芝が並ぶというのは,不名誉であり,残念なことだとおもいます。

くわしくは,こちらから東京証券取引所のホームページで確認できます。

なお,万が一,上場廃止になる場合には,整理銘柄に指定されます。整理銘柄に指定されてから,原則として1カ月間は売買ができますが,1カ月が過ぎると,上場廃止になります。

東芝の経営陣の方は,特設注意銘柄に指定された,ということについて,十分に反省し,責任のある全ての役員の方は,全て退陣していただきたいとおもいます。

毎日新聞「課徴金、過去最大に 引当金84億円計上」との報道の解説–東芝粉飾事件とたたかう弁護団

毎日新聞などで,東芝の粉飾決算に対する課徴金が84億円になる「見込み」だという報道がありました。

この「課徴金」という制度について解説します。

「課徴金」という制度は,わりと最近に導入された制度です。

東芝の事件のように,粉飾決算などで虚偽の内容の有価証券報告がされていた場合に,行政庁が企業に対して「ルール違反に対してお金を支払え」というものです。

ただし,「課徴金」というのは,司法手続きとは異なり,行政限りの命令です。

ですから,刑罰としての「罰金」とは異なります。また,刑罰ではないので,「課徴金」についての裁判は開かれません。

また,「課徴金」は行政だけの制度ですので,司法手続きは,課徴金とは別におこなわれる可能性はあります。
「課徴金」にもとづく金銭の納付がされたからといって,それで全てが許されるわけでは全くありません。

また,「課徴金」を支払うのは,会社である東芝です。ですから,東芝を退職した,粉飾決算について責任のある元取締役の責任は,まだ追及されていないことになります。

元取締役個人の刑法上の責任を追及する可能性があるのは東京地方検察庁ということになります。

刑法上の責任追及がされるかどうかは,これからの事態の進展によるので,なんとも言えません。

ただし,過去の事例をみると,1200億円程度を粉飾決算していたオリンパス事件のときには,中心人物であった元取締役は逮捕され刑事裁判にかけられ,有罪となりました。

オリンパス事件の場合には,バブル崩壊のときの会社の損害を,20年以上前の役員たちの時代から隠し続けていた(と報道されている)わけですから,中心人物であった元役員の責任がどの程度あるのか,疑問に思うところも多少はあったのですが,有罪になったわけです。

それと比較すると,今回の事件は,粉飾決算の金額も大きいですし,元取締役3人が中心となって始めたものでもあると思われますので,刑事上の責任は追及されてしかるべきだとは思っています。

なお,ちまたには,
「東芝は大会社だから検察が遠慮をしているのでは?」
「東芝のOBが総理大臣と近いから検察が遠慮をしているのでは?」
と考えている人がいるかもしれませんが,検察が,そういう理由で捜査を遠慮するとは,全く思いません。

検察が遠慮をするのは,大物政治家とか,大物官僚に対してぐらいであり,その他の民間の人間に対して,検察が遠慮をするということは,全くあり得ません。

検察にとっては,大会社の社長であろうが,高校生だろうが,ラーメン店の従業員だろうが,とくに区別はありません。

そもそも,ライブドア事件のときには,堀江氏は,時の総理大臣の陣営から依頼を受けて衆議院議員に立候補したほど,総理大臣に近い立場にいたわけですが,それでも,検察は,全く遠慮しなかったわけです。

そのことを考えれば,東芝のOBが,時の総理大臣と近いという程度の事情は,検察にとっては,全く考えるに値しない事情です。

 

 

朝日新聞「東芝歴代役員は計10億円賠償を 株主が提訴請求書」との記事について

朝日新聞(および他紙)にて,東芝歴代役員に対して10億円賠償を求めるように,奈良県の個人株主が提訴請求書を東芝に送った,という記事がでています。

2015年9月9日の朝日新聞の記事「東芝歴代役員は計10億円賠償を 株主が提訴請求書」

この記事は,裁判についてのよく知っていないと誤解する可能性があるので,私が補足して説明します。

まず,この奈良県の個人株主の方がおこなおうとしているのは,「株主代表訴訟」という種類の裁判です。

「株主代表訴訟」というのは,どういう裁判かといいますと,

  • 違法な行為をして,会社に損害をあたえた取締役・元取締役がいる場合に
  • 取締役が会社を支配しているために,取締役の違法行為が野放しになっていたり,
  • あるいは,元取締役と現在の取締役との間に特別な人間関係があって,現在の取締役が元取締役に対して,遠慮してしまって損害賠償請求をしていなかったりする場合に,
  • 会社の株主が,「会社の代わりに」裁判を起こす,

という制度です。

そして,「株主代表訴訟」というのは,「本来は会社が元取締役などに対して損害賠償の裁判を起こすべきなのに起こさない」という場合だけに認められる制度ですから,いきなり最初から株主代表訴訟を起こすことはできません。

今回,東芝に対して株主代表訴訟を起こそうとしている株主は,手続きとしては,まず最初に,東芝に対して

「あの元取締役は,違法なことをして東芝に損害を与えたんだから,ちゃんと損害賠償請求しろよ」

という要求をおこなわないといけません。

これが,新聞のなかで「提訴請求書」と言われている文書のことです。

なお,「提訴請求書」を東芝に出してから,東芝が60日以内に,元取締役に対して損害賠償の裁判をおこなわないときに,株主に「株主代表訴訟」をおこなう権限が与えられます。

ですので,「提訴請求書」を出してから,最低でも60日間は株主代表訴訟を裁判所に出せません。

ところで,「提訴請求書」のなかで,東芝が元取締役に対して「10億円」を請求しろ,と書かれているわけですが,この「10億円」という数字は,おそらく,2015年7月20日に報告書を提出した第三者委員会の設置・運営費用のことと思います。

たしか,第三者委員会の設置・運営にかかった費用が10億円だったと記憶していますので。

今回の提訴請求書が「10億円」という数字を出した背景となる考えとしては,

「東芝の元取締役が粉飾決算をしなかったら,少なくとも,第三者委員会を設置することは,あり得なかった。したがって,第三者委員会の設置と運営のために必要な費用は,粉飾決算によって発生した損害だ」

というものだと思います。

もちろん,東芝が粉飾決算をおこなったせいで発生した損害は,ほかにもいっぱいあるわけですが,まずは「誰もが絶対に認めざるを得ない請求」からはじめる,という考えで,10億円,という金額からはじめたのだと思います。

株主代表訴訟の場合には,第三者委員会の費用からはじめる,というのは,よくある手法であり,手堅いやり方だと思います。

なお,報道にある「奈良県に住む株主」の方というのは,私は,おそらく,あの方だろうなあ,と思い当たるところはあります。東芝の件だけではなく,ほかにも,粉飾決算があるたびに,代表訴訟に手広く関与されている方です。
むろん,日本の証券市場を適正化させたいという強い正義感をもっている,立派な方です。
このような方が,日本でもほかにも多くいると,企業も緊張感がありますよね。

なお,「株主代表訴訟」の場合には,元取締役が賠償金を支払った場合,それは全部,東芝に対して支払われます。
裁判を起こした個人株主には,1円ももらえないようになっています。

ですので,株主代表訴訟をおこなう株主,というのは,純粋に正義感でおこなっていると言えるのです。

 

東芝事件株主弁護団の発足にあたって(4)

粉飾決算の事件として、世間の注目を浴びた事件としては、ライブドア事件を外すことはできないと思います。

堀江貴文氏は、IT企業の若き指導者として、過激な言動で世間に物議をかもしていました。
「稼ぐが勝ち」というタイトルの書籍を出版し、「金を稼げば女にモテる」というような、かなり即物的な言動をされていました。

2004年、2005年当時は、ちょうど、時の小泉首相の「改革」路線であったこともあり、日本全体が、新しいことをやろうとする人に対して、寛容であったと思います。

ただ、思えば、小泉首相のもとでの「改革」のうち、あとで検証すると、「やらなければよかった」と評価されるものも多々あります。

法科大学院の設置をはじめとする「司法改革」も、そのひとつです。法科大学院は、設立当初から、「司法試験合格者3000人」「司法試験合格率7割」というような目標というか、スローガンが先行しており、「法科大学院は大丈夫か?」「法科大学院は、やばくないか?」と指摘する声が多かったと記憶しています。

ところが、冷静な反対の声を無視して「改革に反対するものは抵抗勢力だ」とでも言わんばかりに、あれよあれよ、と法科大学院が、雨後のタケノコのように、日本全国に、ニョキニョキと生えてきました。

特定の大学を取り上げることもないかとは思いますが、姫路獨協大学などは、今までの大学卒業生のうち司法試験合格者がゼロであったにもかかわらず、法科大学院の設置が許された、ということでい、まさに、「法科大学院バブル」の時代でした。

法科大学院は、まったく、我が国の司法界の暗黒の歴史のひとつですが、少し脱線が過ぎました。そういうふうに、新しいことにチャレンジするような人を社会が許容する雰囲気だったのが、2004年、2005年ころの、日本社会でした。

その時代の流れの中で、ライブドアの堀江氏は、あっという間に頭角をあらわし、時代の寵児となっていったのです。

堀江氏は、もともと、ライブドアの高い株価を利用して、他の企業を買収していました。ライブドア自体の事業は、それほど利益が出ていたわけではないのですが、ライブドアの株価が高ければ、現金ではなく、株で他の価値ある企業を買収することができます。そして、買収した企業が、きちんと利益を出せば、それにより、ライブドアも利益を出せるようになる、という構造です。ライブドアの株価さえ高くたもたれていれば、合理的な企業戦略であったとも言えるでしょう。

たしかに、堀江氏は、買収する企業の選択については天賦の才能があったと思います。堀江氏が買収していた企業は、消費者金融業、証券会社、弥生会計、など、きちんと現金を生み出していた企業でした。
とくに、ライブドアグループの利益の90%は消費者金融事業が生み出していたのです。堀江氏は「稼ぐが勝ち」という書籍も出していたくらいですので、きちんと現金を生み出す事業の大事さをちゃんと知っていたのです。

なお、このころに堀江氏が買収した企業の多くは、のちにライブドアが粉飾決算で大きな波乱に巻き込まれたあとも、それとは関係なく利益を上げ続けていたため、ライブドアは企業としては生きながらえることになります。堀江氏の企業を見る目の正しさは、のちに皮肉な形で証明されたということです。

堀江氏のそういう点は、理念が先行して稼ぎがついてこずに経営破綻していた多くのIT企業とは、一線を画するものであったと思います。

なお、「IT企業が高い株価を利用して、現金ではとうてい買収できないような大きな会社を買収する」という手法は、堀江氏の独創ではなく、その数年前のアメリカに模範がありました。

AOLは、アメリカのインターネット・プロバイダー事業などをおこなう会社でした。2000年ころというのは、アメリカでインターネット・バブルが盛り上がった時期でした。

インターネット・プロバイダー事業というのは、実際にはそれほど高い利益の出る商売ではないのですが、このころのアメリカ証券業界では、インターネットに関係していれば、なんでも高い株価がついたのです。

AOLは、自社の株価がもっとも高い時をねらって、タイム・ワーナーを買収しました。タイム・ワーナーは、有名な新聞紙のタイム、映画・エンターテイメントのワーナーが合併した会社です。

日本でいえば、日本経済新聞と東映を合わせたような会社でしょうか。

もしも、日本で、@ニフティが、日本経済新聞と東映を買収していたとしたら、当時の日本人は、
「インターネットは、そんなにすごいのか」
と、驚いたことでしょう。
それと同じくらい、AOLによるタイム・ワーナーの買収は、インパクトがありました。

 

東京での被害者説明会を行うこととしました。

平成27年9月5日の被害者説明会が、テレビ、新聞で、大きく報道されました。

関西では、関西テレビ、毎日放送がテレビのニュース番組で取り上げていただいたほか、

新聞では、日経新聞、読売新聞、毎日新聞、朝日新聞、産経新聞、中日新聞、その他、多くの新聞で取り上げていただきました。

新聞の紙面では、弁護団の事務局の連絡先も書いていただいたため、事務局では、朝から電話がひっきりなしにかかってきており、今日だけで、30本くらいの問い合わせの電話が鳴り続いていました。

通常、新聞報道では、弁護団の連絡先を書くことは、あまりないのです。

しかし、新聞で弁護団の連絡先を書いていただいたということは、今回の弁護団活動について、記者の方々が、好意的にとらえていただき、いわば、真面目な弁護団活動だと評価していただいたということだと考えています。

お電話をいただいたなかには、相当数、関東からの電話があり、

「なんで東京で説明会をやらないのか?」というお問い合わせが多かったのです。
やはり、東芝は本社が東京ということもあり、東京の方の注目度が高いなあと思いました。

説明会のときにお会いした記者の方々の話では、東京でも、東芝に対する損害賠償請求を考えている法律事務所が、2,3、あるという話を聞きましたが、実際に行動を起こしている事務所は、あまりないように思います。

関西の弁護士が東京で説明会をすることについて、関東の方には抵抗感がないのか?とも思いましたが、何人かにお話をお聞きしたところ、

「とくに問題は感じない」

ということでしたので、みなさんが、東京での説明会をお求めになるのであれば、ということで、東京で説明会をおこなうことにしました。

場所は、たまたま、当弁護団に好意をもっていただいた方の関係で、なんと、皇居にほど近い、丸の内の一等地を説明会の会場として使わせていただけることになりました。

帝国劇場ビルです。

帝国劇場ビルは、日比谷線、千代田線、有楽町線、都営三田線、など、丸の内を通る地下鉄の多くの駅と直結しているので、アクセスがすごく便利です。

http://xn--7rvn38bmne13z.com/kaijou/tokyo.html

10月3日午後1時半開始の予定にしていますので、よろしくおねがいします。

 

国内初の被害者説明会を開催しました。

平成27年9月5日土曜日,国内初の東芝に対する株主の損害賠償請求の被害者説明会をおこないました。毎日放送,関西テレビのニュース番組にて,取り上げられたほか,日経新聞,毎日新聞,読売新聞,朝日新聞,サンケイ新聞などの新聞で報道されています。

時間がたつごとに,さまざまなメディアにて,取り上げられており,やはり,国内初のこころみを実行したことについて,社会的な関心をよせられていることを実感しました。

今後は,神戸,京都,大阪,岡山,東京,というように,関西,関東を中心に,説明会活動を広げていきたいと考えています。

また,福岡からは,複数の方から,ぜひ,福岡でも説明会をおこなってほしい,という熱望を受けていますので,年内に,一度は説明会をおこないたいと思っています。

東芝事件株主弁護団の発足にあたって(3)

前回まで、アメリカでの、エンロン、ワールドコム、という大企業の粉飾決算による破綻にともなって、アメリカで集団訴訟が起こされた、という話をしました。

日本では、古くは、粉飾決算により発生する損害は

「株式投資なんて、そういうもの」

というように考えられていたフシがあります。

たぶん、バブル崩壊以前には、そういうノリがあったでしょう。

しかし、従来、日本の上場企業の会計が不透明だと主張し続けていたアメリカにおいて、2001年にエンロンのような巨額粉飾決算が発覚し、

「日本のことをいろいろと言ってたけど、アメリカだってダメじゃん」(世界の最大多数の内心)

と言われていた中、アメリカで、いわゆるSOX法が成立しました(2002年)。

正式な名前は「上場企業会計改革および投資家保護法」といいます。 続きを読む 東芝事件株主弁護団の発足にあたって(3)